遺言書が見つかったら?開封前の確認手順と検認が必要なケース

封印のある遺言書を開けずに種類を確認するポイント

遺品整理中に遺言書らしい封筒を見つけても、封印があればその場で開けないでください。まずは書面と封筒を原状のまま分け、発見場所と外側の状態を記録します。

次に確認するのは、遺言書の種類と保管経路です。自宅保管の自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認が必要ですが、公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は原則として検認が要りません。

すでに開封していても、それだけで直ちに無効になるとは限りません。書き込みや廃棄、遺言内容に沿った財産処分を止め、原状を保って家庭裁判所の検認手続を確認しましょう。

遺言書を見つけた直後にする3つのこと

発見直後は中身の確認より、証拠となる状態を変えないことが先です。次の順番で対応すれば、相続人間の行き違いも抑えやすくなります。

  1. 封印があれば開封を止める。書面を折り直したり、封を貼り直したりせず、見つけた状態を保ちます。
  2. 発見場所と外側の状態を記録する。見つけた日時、場所、封印や表書きの有無を控え、可能なら外側だけを撮影します。
  3. 共同相続人へ共有して種類を確認する。一人で保管場所を変えず、自筆、公正証書、秘密証書、法務局保管の手掛かりを探します。

封筒に「公正証書」「法務局保管」とあっても、表書きだけで方式を断定しないことが大切です。公正証書の有無は公証役場、法務局保管の有無は法務局(遺言書保管所)で確認します。

次の行動は、遺言書の状態や相続人の信頼関係を損ねます。一人で中身を確かめて処理を進めないようにしてください。

  • 封印を切る、のりをはがす、封を貼り直す
  • 本文や封筒へメモを書き込む、消す、ページを分ける
  • 内容に不満があるから捨てる、隠す、書き換える
  • 検認前に遺言内容を使って名義変更や財産処分を進める

相続人が複数いるときは、重要書類を動かす前の記録と共有が特に重要です。遺品全体を整理する場合も、処分品とは別に保留箱を作ると紛失を防げます。

遺言書の種類で検認が必要かを判断する

遺言書が見つかったとき、最初に確認すべきことは「どの種類か」です。検認の要否は、種類と保管場所の組み合わせで判断します

種類・保管検認開封次の確認先
自筆・自宅保管必要封印なら家庭裁判所で開封家庭裁判所
秘密証書遺言必要家庭裁判所で開封家庭裁判所
公正証書遺言不要謄本を確認公証役場
自筆・法務局保管不要証明書で確認法務局(保管所)
自宅保管の自筆証書遺言・秘密証書遺言と、公正証書遺言・法務局保管の検認要否を分ける図
遺言書の方式と保管先で、家庭裁判所の検認が必要かを確認します。

自宅保管の自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認が必要

自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、封が開いていても検認の対象です。保管者または発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所へ提出して検認を請求します。

秘密証書遺言も検認が必要です。公証人は遺言の存在を確認しますが、内容を確認せず、原本を保管する制度でもないため、発見後は家庭裁判所の手続へ進みます。

公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要

公正証書遺言は公証役場で原本が保管されるため、家庭裁判所の検認は不要です。謄本が見つからなくても、相続人などの利害関係人は全国の公証役場で遺言の有無と保管先を検索できます。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言も検認は不要です。相続人・受遺者・遺言執行者などは、遺言書保管事実証明書や遺言書情報証明書を請求して確認します。

遺言書を開封してしまったときの対応

検認前に開封しても、その事実だけで遺言書が直ちに無効になるわけではありません。ただし、家庭裁判所外で封印のある遺言書を開封した場合は、5万円以下の過料の対象になる可能性があります。

開封後は、封筒と書面をまとめて原状のまま保管します。開封した日時と状況を記録し、共同相続人へ隠さず共有したうえで、家庭裁判所へ検認を申し立ててください。

開封後も書き込み・廃棄・遺言執行は止めることが重要です。破れや加筆がある、作成者の筆跡に疑いがある、相続人間で改ざんの主張が出た場合は、現物を保って弁護士へ相談します。

  • 元どおりに見せるため封を貼り直す
  • 開封したことを伏せて一人で相続手続を進める
  • 遺言書の写真だけを残して現物を処分する

家庭裁判所へ検認を申し立てる流れ

検認とは、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、形状、訂正、日付、署名などの現状を明確にして、偽造・変造を防ぐ手続です。遺言の有効・無効を決める手続ではありません

STEP.1 申立先と申立人を確認

遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ、保管者または発見した相続人が申し立てます。

STEP.2 書類と費用を準備

申立書、遺言書、戸籍類、収入印紙800円分、申立先が指定する郵便料を準備します。

STEP.3 期日後に証明書を申請

裁判所の案内に沿って検認期日に出席し、必要に応じて検認済証明書を申請します。

申立人と申立先を確認する

申立人になれるのは、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人です。申立先は、遺言者が亡くなった場所ではなく、最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

住所地の管轄が分からない場合は、裁判所の申立書提出先一覧で確認します。封印のある遺言書は開けず、申立先の案内どおりに保管・提出してください。

必要書類と費用をそろえる

標準的な必要書類は次のとおりです。相続人の範囲によって追加の戸籍が必要になるため、申立先の案内で自分のケースを確認してください。

  • 遺言書検認の申立書
  • 遺言書(封書の場合は封書のまま)
  • 遺言者の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍
  • 相続人全員の戸籍と、関係に応じて指定される追加戸籍
  • 遺言書1通につき収入印紙800円分
  • 申立先の家庭裁判所が指定する連絡用郵便料
遺言書の検認申立てで準備する申立書・遺言書・戸籍・収入印紙・郵便料のチェック図
標準的な書類と費用を確認し、郵便料は申立先の家庭裁判所で確かめます。

郵便料は家庭裁判所ごとに異なります。申立前に最新額を確かめ、戸籍をそろえるのに時間がかかる場合も、入手できない書類の追加提出が可能か申立先へ確認しましょう。

検認期日と検認済証明書まで進める

申立て後、家庭裁判所から相続人へ検認期日が通知されます。申立人以外の相続人が出席するかは各自の判断で、全員がそろわなくても検認手続は行われます。

期日には、申立人が遺言書と裁判所から指定された物を持参します。裁判官が出席した相続人等の立会いのもとで状態を確認し、封印のある遺言書はここで開封します。

遺言を使って相続手続を進めるには、検認済証明書が必要です。検認後に申請し、遺言書1通につき収入印紙150円分を納めます。

検認後は遺言の有効性と次の相続手続きを確認する

検認はあくまでも遺言書の現状を記録し、偽造・変造を防ぐための手続です。検認を受けたからといって、遺言の内容が法的に有効であると保証されるわけではありません。

検認後は、遺言執行者の指定、対象財産、日付・署名・押印などの形式を確認します。内容や筆跡、作成時の判断能力について争いがある場合は、現物と検認資料を持って弁護士へ相談します。

相続登記、預貯金の払戻しなどは、財産ごとに必要書類が異なります。遺言執行者が指定されている場合は、先に連絡して役割を確認しましょう。

また、相続放棄は原則として相続開始を知った時から3か月以内です。検認待ちでこの期間が自動的に止まるわけではないため、債務が疑われる場合は家庭裁判所や弁護士へ早めに確認してください。

遺言書は開封せず、種類確認から手続きを始める

判断点を先に確認します。遺言書を見つけたら、封印のある書面は開けず、発見状況を記録して共同相続人へ共有します。その後、自宅保管の自筆証書、秘密証書、公正証書、法務局保管のどれに当たるかを確かめます。

検認が必要なら遺言者の最後の住所地の家庭裁判所へ申し立てます。公正証書なら公証役場、法務局保管なら遺言書保管所で確認し、方式が分からないときも開封せず家庭裁判所の手続案内を利用してください。