介護施設への入所が決まると、自宅の片付けが待ったなしで始まります。
しかし「何から手を付ければいいのか分からない」「時間がない中で判断ミスをしてしまった」という声は後を絶ちません。実際、入所後に「あれを持ってくればよかった」「これは捨てるべきではなかった」と後悔するケースは非常に多いのです。
施設入所前の生前整理で最も重要なのは、「入所後に取り返しがつかない物」から優先的に整理すること。手続きに必要な書類や、再取得が困難な物を見極めることが、失敗しない片付けの第一歩です。
もくじ
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なぜ「後悔する物」から片付けるのか
施設入所後は、自宅への出入りが難しくなります。
特に要介護度が高い場合、一度施設に入ってしまうと「忘れ物を取りに帰る」という行為自体が大きな負担になります。家族が代わりに取りに行くにしても、何がどこにあるか分からなければ探し出すことすら困難です。
一般的に、施設の居室は6〜8畳程度の個室が中心で、自宅に比べて圧倒的にスペースが限られています。火気・刃物・大型家具などは持ち込み制限がある施設も多く、「後で持って行けばいい」という考えは通用しません。
だからこそ、入所前の段階で「絶対に必要な物」「後悔しやすい物」を優先的に確保し、不要な物を整理する順番が重要になるのです。
入所後に後悔しやすい物、3つのカテゴリー
手続き・健康関連の必需品
介護保険証・医療情報・年金手帳・印鑑・通帳・契約書類といった書類は、入所手続きや費用支払いに直結します。これらを紛失すると再発行に時間と手間がかかり、入所手続き自体が遅れる可能性もあります。
また、義歯・補聴器・眼鏡・血圧計などの健康管理に必要な物も、誤って処分してしまうと再取得の費用負担が大きくなります。メーカーによると、補聴器の再購入には数万円から十数万円かかることも珍しくありません。
心理的価値が高い物
写真・アルバム・手紙・記念品など、感情的価値の高い物は心理的安定に寄与するとされています。
介護現場では、馴染みの写真を使った回想法が実践されることもあり、愛用していた小物や思い出の品を施設に持ち込むことで、新しい環境への適応がスムーズになるケースも報告されています。
ただし、施設のスペース制約があるため、全量持ち込みは現実的ではありません。特に大切な数点に絞り込む判断が必要です。
持って行ったが使わない物
逆に、入所後に「邪魔になった」と後悔しやすいのが大型家具・古い家電・大量の衣類や趣味用品です。
施設には備え付けのベッドや収納があり、大型タンスやテレビ台を持ち込んでも使用頻度は低く、居室を圧迫するだけになります。また、古い電化製品は電源容量の制約で使えない場合もあり、二重搬入・二重処分の手間とコストが発生します。
失敗しない片付けの順番
第1優先|書類・貴重品の集約
まず最初に手を付けるべきは、書類と貴重品の集約です。
介護保険証・健康保険証・年金手帳・預金通帳・印鑑・不動産関連書類・医療情報(お薬手帳・診察券)などを一箇所にまとめ、家族間で所在を共有します。入所手続きには様々な書類が必要になるため、この段階での整理不足は後々大きな負担になります。
| 分類 | 具体例 | 優先度の理由 |
|---|---|---|
| 身分証明 | 介護保険証、健康保険証、マイナンバーカード | 入所手続きに必須 |
| 金融関係 | 通帳、印鑑、年金手帳、契約書 | 費用支払い・資産管理に必要 |
| 医療情報 | お薬手帳、診察券、検査結果 | 継続的な医療に必要 |
| 健康器具 | 義歯、補聴器、眼鏡 | 再取得困難・高額 |
第2優先|危険物・大型物の除去
次に、自宅に残る期間中の安全確保を目的に、危険物と大型物を整理します。
住環境リスク研究によれば、居室内の物品過多や動線上の障害物は転倒リスクを高め、環境整備により転倒回数が最大38%減少したという国際レビューもあります。整理未実施の住環境で転倒・骨折してしまうと、介護度が悪化し、入所そのものが遅れる可能性もあります。
具体的には、以下を優先的に処分・移動させます。
- ガスコンロ・ストーブなどの火気関連
- 床に這うコード類
- 玄関や廊下の床置き荷物
- 不要な大型家具(タンス・食器棚など)
これらは施設にも持ち込めないため、早期処分が合理的です。
第3優先|感情的負担の大きい物
写真・手紙・コレクション類など、感情的負担の大きい物は時間的余裕を確保して慎重に判断します。
業者の実務解説でも、この段階での判断を急ぎすぎると後悔につながりやすいと指摘されています。家族と相談しながら、「施設に持って行く物」「自宅または家族宅で保管する物」「処分する物」に分類することが推奨されます。
判断能力の低下が見られる場合は、本人の意向を尊重しつつも、家族や専門職(ケアマネジャーなど)と協議しながら進めることが重要です。
業者に依頼する場合の注意点
自力での片付けが難しい場合、生前整理業者に依頼する選択肢もあります。
一般的に、費用相場は間取りや家財量により数万円から数十万円程度の幅があります(1LDKで約7〜20万円など)。階段搬出の有無や駐車条件、買取の有無によっても変動します。
ただし、業者は作業代行が中心で、「何を残すか」の意思決定は依頼者側の役割です。事前に家族で判断基準を共有し、最低限「書類・貴重品・健康器具・思い出の品」については自分たちで仕分けておくことをおすすめします。
業者選定では、遺品整理士認定協会などの認定制度の有無と、見積内訳(人件費・処分費・追加料金)が明確かどうかを確認することで、トラブル回避につながります。
まとめ:まずは書類や貴重品をまとめよう
施設入所前の生前整理では、「入所後に後悔する物」から優先的に手を付けることが失敗を防ぐ鍵です。
具体的には、①書類・貴重品の集約 → ②危険物・大型物の除去 → ③感情的負担の大きい物の判断という順番で進めることで、手続きのトラブルや安全リスクを最小化できます。
「全部持って行けばいい」という考えは、施設の持ち込み制限やスペース制約により現実的ではありません。一方で、「後で取りに来ればいい」という楽観的な判断も、入所後の取り返しがつかない状況を招きます。
施設入所は人生の大きな転換点です。本人と家族が後悔しないよう、時間的余裕を持って計画的に片付けを進めていきましょう。

