相続放棄を検討しているなら、遺品整理は売る・使う・払うを先に止めることから始めます。価値ある物を処分したり、故人のお金を使ったりすると、相続した意思があると見られる可能性があります。
最初にするのは、室内を写真で残し、通帳・請求書・契約書・貴重品を分けて保管することです。生ごみなど衛生上放置できない物も、捨てる前に写真とメモを残します。
相続放棄の申述は、相続の開始を知った時から原則3か月以内です。賃貸退去や業者契約を急かされても、処分範囲と支払いを決める前に弁護士・司法書士へ確認してください。
相続放棄前の遺品整理は「残す・記録する」が基本
相続放棄前の片付けは、部屋を空にする作業ではありません。後で説明できるよう、見つけた物と動かしていない物を記録する作業です。
| 行動 | 相続放棄前 | 理由 | 次の対応 |
|---|---|---|---|
| 通帳・請求書を見る | 確認・保管中心 | 財産調査に必要 | 写真とリスト |
| 貴金属・車を売る | 保留 | 処分と見られやすい | 弁護士等へ確認 |
| 生ごみを捨てる | 最小限なら検討 | 衛生維持のため | 写真と日時メモ |
| 業者へ搬出依頼 | 範囲を限定 | 指示責任が残る | 見積書に明記 |
迷う物は「処分」ではなく「一時保管」に回します。保管箱を作り、写真、発見日、保管場所をメモしておくと、後で相談するときに状況を説明しやすくなります。

相続放棄前にやってはいけない行為は3つ
民法では、相続財産を処分した場合などに、単純承認をしたものとみなされることがあります。遺品整理では、次の3つを特に避けます。
- 価値ある遺品を売る・譲る・形見分けする
- 現金や預貯金を引き出して使う
- 借金や滞納金を自己判断で支払う
- 注意:「少しだけ」「家族だから」という感覚で持ち帰らない
- 注意:督促状や請求書を見つけても、すぐ支払わない
- 注意:業者へ「全部処分でよい」と指示しない
価値ある遺品を売却・形見分けしない
貴金属、ブランド品、骨董品、車、高価な家電などは、売却や形見分けを急がないでください。相続財産を自分の判断で動かしたと見られる可能性があります。
価値が分からない物も、査定に出す前に写真を撮り、同じ箱で保管します。親族へ渡す場合も、相続放棄の方針が固まるまでは保留が安全です。
現金や預貯金を使わない
故人の財布、タンス預金、預金口座、証券口座は、見つけても使わずに記録します。通帳やカードは封筒にまとめ、発見場所と日時を書いて保管します。
公共料金や家賃の支払いに使ったつもりでも、相続財産を消費したと争われることがあります。支払う前に、弁護士・司法書士へ使途と金額を相談します。
借金や滞納金を自己判断で支払わない
督促状、カード明細、滞納家賃の請求を見つけても、その場で支払わないでください。相続する意思があると受け取られる余地を減らすためです。
貸主や債権者から連絡が来たら、相続放棄を検討中であること、専門家へ確認してから返答することを伝えます。口頭で支払い約束をしないことも大切です。
相続放棄前でも確認・保管しやすいもの
相続放棄を検討していても、財産や借金の調査まで禁止されるわけではありません。民法上も、承認や放棄の前に相続財産を調査できるとされています。調査と保管は、処分と分けて進めます。
財産調査に必要な書類は捨てずにまとめる
通帳、キャッシュカード、保険証券、不動産書類、借用書、請求書、契約書、遺言書らしき封筒は捨てずにまとめます。封筒ごと保管し、勝手に処分しないでください。
スマートフォンやパソコンも、初期化や売却は避けます。ロック解除が必要な場合やデジタル資産が疑われる場合は、触る前に相談した方が判断しやすくなります。
衛生上の廃棄は写真とメモを残す
生ごみ、腐敗しそうな食品、悪臭や害虫につながる物は、衛生維持のために最小限の対応が必要になることがあります。ただし、価値ある物の処分とは分けて考えます。
捨てる前に写真を撮り、日付、場所、理由をメモします。判断に迷う家具、家電、貴重品、書類は廃棄せず、保管か相談に回してください。
賃貸や業者依頼で急ぐときの進め方
退去期限が近いと、片付けを急ぎたくなります。けれども、相続放棄前は部屋を空にすることより、処分範囲と支払いの約束を分けることが重要です。
貸主や管理会社には支払いより方針確認を優先する
貸主や管理会社には、相続放棄を検討中であること、室内の確認と保管を進めていることを伝えます。滞納家賃や原状回復費をその場で支払う約束は避けます。
鍵の扱い、入室日、残置物の保管、退去期限は書面やメールで残します。合意内容が曖昧なまま、家財の一括処分を進めないようにします。
業者には処分禁止品と相続放棄検討中を伝える
遺品整理業者へ相談する場合は、最初に相続放棄を検討中だと伝えます。依頼範囲は、写真撮影、仕分け補助、搬出せずに保管する箱作りなどに限定します。
見積書には、残す物、触らない物、処分しない物、追加料金、キャンセル料を明記してもらいます。口頭だけで「不要品は全部処分」と伝えるのは避けてください。
家庭ごみ処分と買取の許可を分けて確認する
家庭から出る廃棄物の収集運搬には、市区町村の一般廃棄物処理業許可または委託が必要です。産業廃棄物処理業許可や古物商許可だけでは足りません。
一方、遺品の買取には古物商許可の確認が必要です。処分と買取を同じ業者に頼む場合も、何を処分し、何を買い取るのかを分けて書面に残します。
すでに遺品整理を始めた・借金が見つかったとき
すでに一部を片付けた場合でも、隠さず時系列で残すことが大切です。触った物、捨てた物、支払った金額、相手方、日時を整理しておきます。
- 処分・移動・支払いの内容を時系列で書く
- 領収書、見積書、請求書、督促状を保管する
- 次の作業を止め、弁護士・司法書士へ相談する
借金や督促状が出てきた場合は、支払いより確認が先です。相続放棄の期限、すでに行った行為、見つかった書類を一緒に相談できるよう準備します。
相続放棄と遺品整理で迷いやすい質問
少額の形見なら持ち帰っても大丈夫ですか?
写真や手紙など換金性が低い物でも、相続放棄前は一人で持ち帰る判断を避ける方が安全です。高価か分からない物は、持ち帰らず写真と保管場所を残してください。
葬儀費用や家賃を払うと相続放棄できませんか?
金額、支払元、支払理由によって判断が変わります。故人の財産から支払う、自分のお金で立て替える、支払いを約束する前に、弁護士・司法書士へ確認してください。
3か月以内に財産や借金を調べきれないときはどうしますか?
家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。期限が近い場合ほど、戸籍、請求書、財産資料、調査状況をまとめ、早めに手続き先を確認します。
相続放棄前は処分より記録を優先する
相続放棄を検討している間は、遺品整理を急ぐほど判断ミスが起きやすくなります。価値ある物、現金、預貯金、請求書、契約書は、処分ではなく記録と保管へ回します。
- 売却・形見分け・一括処分は相続放棄の方針が固まるまで保留する
- 通帳、請求書、契約書、貴重品は写真とリストを残して保管する
- 期限、支払い、業者依頼で迷ったら弁護士・司法書士へ確認する
3か月は長いようで、戸籍の取得や借金調査を始めるとすぐ過ぎます。部屋を片付ける前に、相続放棄の手続き、財産調査、保管する物の順番を決めてください。

