生前整理の情報ファイルは、通帳やカード、保険証券の原本を一か所へ集める物ではありません。契約先と原本の保管場所を探すための索引にすると、安全性と家族の確認しやすさを両立できます。
最初はA4用紙や薄いファイルを用意し、「金融機関・カード」「保険」「デジタル契約」「連絡先・保管場所」の4区分を作ります。契約先、用途、原本の場所を書くだけでも初版になります。
自分で整理できるのは、契約の存在や用途、書類の場所までです。暗証番号、パスワード、カードのセキュリティコードは同じ一覧へ直接書かず、秘密情報は別に管理してください。
完成後は、信頼できる相手へファイルの存在と確認方法を伝えます。ただし、家族が本人の情報で操作できるとは限りません。個別の解約・請求は契約先へ、法的な意思表示は遺言の相談先へ確認する必要があります。
生前整理の情報ファイルは「原本の束」ではなく索引にする
銀行口座、クレジットカード、保険、証券口座などは、契約先も原本の場所も分散しがちです。紙の通帳がないネット銀行やデジタル契約は、家族が存在に気づけないこともあります。
そこで、情報ファイルには「何があるか」「何に使っているか」「原本はどこか」「どこへ確認するか」を記録します。家族は、家中を探す前に確認順を決められます。
通帳や保険証券の原本まで一緒に綴じると、紛失・盗難時の影響が大きくなります。原本は適切な場所へ戻し、ファイルには具体的な保管場所を書きましょう。
最初に用意するものと4区分の作り方
市販のエンディングノートがなくても、A4用紙、筆記具、4枚の見出し紙があれば始められます。差し替えやすい形で始めるなら、バインダーやクリアファイルが使えます。
- 手元の通帳、カード、保険の通知、利用明細を一時的に集める
- 4区分へ契約先、用途、原本の保管場所、確認先を書く
- 表紙に作成・更新日、次回見直し、共有相手を書く
各区分は、次の4列でそろえると見返しやすくなります。残高や保険金額は変わるため、まずは契約の存在を見つける情報から書くのが続けやすい方法です。
| 区分 | 書く情報 | 原本 | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 金融機関・カード | 名称・支店・用途・支払口座 | 金庫、机の引き出しなど | 銀行・カード会社 |
| 保険 | 会社・種類・被保険者・証券番号 | 証券の保管場所 | 保険会社 |
| デジタル契約 | サービス・用途・登録メール | 端末・通知の場所 | 事業者窓口 |
| 連絡先・保管場所 | 家族・相談先・原本の場所 | 場所だけを記録 | 契約先・担当窓口 |
この表は、原本や秘密情報を集めるための物ではありません。家族が「次に何を探し、どこへ確認するか」を判断できる範囲に絞ります。

通帳・銀行口座・カードは用途と保管場所まで書く
記入時だけ手元の通帳とカードを集めます。そのうえで、銀行名・支店名・口座の種類(普通・定期など)・通帳やカードの実際の保管場所を一覧にします。
名義も忘れずに書き、原本は適切な場所へ戻します。ネット銀行なら、サービス名と登録メールアドレスも手がかりになります。
クレジットカードは、カード会社名・支払口座・主な用途(公共料金の引き落とし用、ネット決済専用など)を記録します。用途が分かると、見直す契約をたどりやすくなります。
使っていない口座やカードを整理する場合は、残高、引き落とし、入金、連携サービスを先に確認してください。情報ファイルの「確認中」欄へ書けば、急いで解約せずに整理できます。
保険は会社名・種類・証券番号・原本の場所を書く
生命保険、医療保険、火災保険などは、保険会社名・被保険者・証券番号・証券の保管場所を記録します。保険の種類と契約者も分かる範囲で加えましょう。
受取人や問い合わせ先も確認できる範囲で加えます。内容が分からない項目は推測せず、「保険会社へ確認」と書いておけば、古い情報を確定情報として残さずに済みます。
デジタル口座・サブスクはサービスの存在を残す
ネット銀行、証券口座、電子マネー、ポイント、動画・音楽などの定期契約は、紙の書類がない場合があります。サービス名・利用目的・問い合わせ先の概要を残します。
登録メールと支払方法も手がかりになります。不明なときは、クレジットカード明細や口座の引き落とし、受信メールを確認し、パスワードは書き込みません。
連絡先・原本保管場所を最後の区分にまとめる
最後の区分には、信頼できる家族、金融機関、保険会社、既に相談している専門家などの連絡先を書きます。名称、電話番号、相談内容を短くそろえます。
原本の場所は「自宅」のように広くせず、「寝室の鍵付き保管箱」「書斎の机2段目」のように特定できる表現にします。鍵の扱いは別の安全な方法で共有してください。
情報ファイルに書かないもの|暗証番号・パスワードの分け方
暗証番号やパスワードをそのままファイルに書くのはリスクが高く、紛失時に被害が広がるおそれがあります。秘密情報を別に管理することを優先します。
次の情報は、通帳・カード・保険の一覧と同じファイルへ直接書かないでください。
- 銀行口座やカードの暗証番号、カードのセキュリティコード
- サービスへログインするパスワード、秘密の質問の答え
- 多要素認証の回復コードなど、本人確認を通過できる情報一式
別管理の方法は、端末の提供元が用意するパスワード管理・承継機能や、必要時だけ開けるよう保護した紙などがあります。普段から秘密情報そのものを家族全員へ共有するのは避けましょう。
情報ファイルには「別管理あり」「確認できる人」「確認条件」「保管場所」までを書きます。契約先が分かれば、家族が事業者へ正式な手続きを問い合わせる手がかりにもなります。
スマホやパソコンに残る契約、家族へ伝える範囲、見せない情報まで整理したい場合は、次の記事も確認できます。
完成後の保管・共有・更新ルール
情報ファイルは、作っただけでは役立ちません。保管場所・共有相手・更新日を決めると、必要なときに信頼できる人が最新版を確認できます。
保管は盗難防止と見つけやすさを両立する
保管場所は、来客の目に触れにくく、紛失しにくい場所を選びます。一方で、本人しか知らない場所では、入院などで説明できないときに見つけてもらえません。
情報ファイルと通帳・カード・保険証券の原本は、同じ場所へ集めない方法も検討します。ファイルが盗まれても、すぐに原本と秘密情報までそろわない状態にするためです。
共有相手には存在・場所・確認ルートを伝える
信頼できる家族に、存在と保管場所を口頭で伝えておくことが大切です。内容をすべて渡す必要はなく、誰が、どの状況で、どこまで確認するかを決めます。
表紙には「共有相手」「本人へ確認できないときに開く」など、閲覧条件を短く書きます。秘密情報の別管理がある場合は、確認ルートだけを伝えてください。
契約変更時と定期点検時に更新する
口座の解約、カードの変更、保険の更新、新しい契約があったら、その都度ファイルを更新し、表紙に更新日を書き添えておきましょう。古い情報は差し替えて混在を防ぎます。
変更がない時期にも、誕生日や年末など覚えやすい日を見直し日に決めると続けやすくなります。表紙の「最終更新日」と「次回見直し日」を確認してください。
情報ファイルでできること・できないこと
情報ファイルの役割は、家族が契約や書類の存在を知り、確認先へたどり着くことです。次のような場面で役立ちます。
- 利用している金融機関、カード、保険、デジタル契約を把握する
- 通帳、カード、保険証券などの原本を探す
- 契約先へ手続き方法と必要書類を問い合わせる
一方で、情報ファイルはあくまで情報の整理であり、遺言書のような法的効力はありません。本人確認や相続手続きの代わりにもならない点に注意してください。
- 預金の払戻し、カード解約、保険金請求には各社所定の確認が必要
- 財産を誰に渡すかなど、法的な効力を求める内容は遺言で検討
- 本人以外のログインや操作は、契約先の手続き・規約を確認
個別の手続きは金融機関、カード会社、保険会社などへ確認します。財産の承継方法に法的な効力を持たせたい場合は、法務局の案内を確認し、弁護士・司法書士・公証人など適切な相談先を選びましょう。
今日作る初版は3項目から|契約先・保管場所・更新日を書く
最初から残高、保障内容、すべての契約を埋める必要はありません。最初は3項目だけで十分です。よく使う銀行口座か保険を一つ選び、次の内容を書いてください。
- 契約先の名称と用途
- 通帳・カード・証券など原本の保管場所
- 作成日または最終更新日
書けない欄は「未確認」として残せば、次に調べることが分かります。秘密情報は分け、表紙に共有相手を加えれば、生前整理の情報ファイルの初版は完成です。

